立ち小便

部屋のベランダから見える茶色いマンションのエントランス。小さい子どもが出たり入ったりを繰り返していて、何をしているのだろうと思ってみていたら遊んでいるだけだった。
どうやら子どもの想像力についていけないほどに年を取ってしまった大人な私、二十八歳です。

社会人として働き始めて七年くらい、はじめて暦どおりの生活を始めた私ですが、言いたいことは、どこに行っても人が多い。遊楽地や新規オープンの店ならともかく近所のカッフェや行きつけのスーパーまで人で溢れている。しまいにはコンビニも立ち読み客で賑わう始末で、何かほら、もっとやれることがあるのではないかと、人ごみに疲れて早々酒を飲み始めた私は思うのですが、だからと言って道行く人をつかまえて、「ほら君、もっとさ、世の中のためにできることがあるだろう」と言うにはあまりに自分の立場が不明確すぎて、結局子どもは無邪気でいいな。でも無邪気って漢字で書くと案外恐ろしい字面だな、と思いながらベランダから外を眺めて、あっ、あの子駐車場の隅で立ち小便をはじめやがった、と、そんな春の夕暮れです。