バス
僕はどこにも向ってないけど、
バスに乗ってどこかに行きたくなるなんて、やはりどーかあるんではないか?
雨の日に渋滞で一向に進まないバス。僕はそのバスの後ろから二つ目の窓際の席に座り、音楽を聴きながら外の景色をぼんやり見ている。こんな日はフィッシュマンズがよく合うと思う。
やがてこのバスは見覚えのある景色から見覚えのない景色のところに僕を連れていく。
行き先は知らない土地。
そこには目的なんかなく、もちろん、計画なんて卑猥なものもない。
ただ、ただ決めただけ。
バスは渋滞を抜けだし、軽快に道路を走る。
移り変わる景色は街並みは違えど風景としては一緒で、僕は少しがっかりする。
そういえば、
早くこの街から抜け出したい。って君は言ってたけど、どこに行っても同じことだと僕は思うよ。少なくとも今はそう思う。
佐藤伸治の声とリズム。深く、ゆっくり潜る。ときに軽快に、または爽快に。
染みていく。
染みると溶ける。溶けて一体になる。
ふと。
僕はどこから乗車したんだっけ?
いや、どこからも乗車していないはず。
でも僕はバスのシートの感触や、窓の質感をはっきり感じることができる。
間違ってない。ウソじゃない。
背中に汗を感じる。僕は不安になっていることに気づく。
ここは?目の前が暗くなっていく。闇が静かに近づいてくる。そして静寂。
このバスはどこに向かってるんだっけ?