はつれ雪ふる、二月のはじめ

西区にある職場に東区から自転車をこいで、いや、自転車のペダルをこいで通っている。
と、書くと当たり前に思われるけれど、東区と西区のあいだには中央区というものがあって、ほとんどの場合、その区域が一番長い距離をもっているのである。具体的に言うと、私の細くて軽い自転車で約四十分、それも遅刻しそうなぎりぎりの緊張感で車道を走ってようやく着く。それを往復と、九百メートルトラック×三周の早朝ランニングを毎朝続けている。ばか、早朝ランニングと書いているのだから、毎朝と書かなくてもいい。
「すごい。がんばっているのね」
なんてことを人からよく言われます。


これだけではただの自慢である。いや、少し自慢したい気持ちがないわけではない。だって、そうじゃなきゃわざわざ書かないもの。
しかし、問題なのは、これだけカロリーを消費しておいて体型に少しの変化も見られないということで、それはつまり、同じだけのカロリーを摂取しているということになる。

そんなに食べているのですか?いえ、食べていません。

そう、私はそんなに食べていない。同居人と同じ量しか摂っていないのは盛られた皿を見ても瞭然であり、まさか私の料理にだけ大量のマヨネーズがかけられているということもあるまい。

それなら、どうしてですか?お酒を飲んでるからかもしれません。

かもしれない、ではなく、そうである。冬だから、とか関係なく私は実に酒を飲む。たしなむ、どころではない。鯨が海水を飲むがごとし。まだ仕事中に手が震えないだけマシだが、震えだしたらおわりだ。入院だ。「酔いがさめたら、うちに帰ろう」だ。

ニーチェいわく
「自制心という言葉を知っているだけで、なにがしか自制できているわけではない。一日に一つ、何か小さなことを断念する。最低でもそのくらいのことが容易にできないと、自制心があるということにはならない」

洪自誠いわく
「花は五分咲き、酒はほろ酔い加減に、最高の趣がある。満開の桜を見たり、泥酔するほど酒を飲んだりしては、台なしだ」

向井秀徳いわく
「酔狂を悪いとは思わん。なぜなら俺自身、今まさに酔っぱらっているからだ。たいていビールから〜中略〜空気感が冬だ。短パンでいきがる小学生の決して明るいとはいえん行く末を勝手に想像しながら俺は自販機のワンカップを手のひらでぐるぐると弄んでいた」

これらはいつかビレッジバンガードで立ち読みした際に控えて置いた言葉である。
だからと言って、何というわけでもない。ただ、他人の言葉を借りて偉そうにしてやろうと思う、少し厭らしい気持ちがあっただけです。