この答えも藪の中
今日の九州は五月並の暖かさだった。
それは、なんというか真冬とされる二月にとって
恩恵と言っても差支えがないほどの心地よさだった。
僕らはその恩恵を目一杯授かろうと
真冬のビアガーデンを行った。
僕は仕事を終え、友人M宅に向かった。
Mの住んでいるマンションは9階建ての鉄筋コンクリートで
Mはその最上階に一人で住んでいる。
そこにはベランダというよりはほとんどテラスに近いほどの
面積のものが備え付けられていて、
そこから香椎の夜景(のある程度)を一望できる。
それはもちろん最上階だけの特権で、そのぶん家賃も高い。
そして不思議なことにMは現在無職真っ最中である。
僕らはそこで西日を眺めながら酒を飲んだ。
西日はビルや道路やMの顔を真っ赤に染め、心地よい風が前髪を揺らす。
風が夜風に変わり、空が暗くなった。
気がつくと、僕らは36本の麦酒の缶を開けていた。
千鳥足でテラスから身を乗り出すと、三号線を走る車の列が
蛇みたいにくねりながら続いているのが見えた。
その光はぼくの目には二重に映り、とても綺麗だった。
僕は気持ちよく酔っぱらった。